社員インタビュー 野沢 与志津​

食ができることの可能性に挑戦する

野沢 与志津Yoshizu Nozawa

調味料事業部 オウンドメディアグループ長

Profile
2002年入社。食品研究所・健康基盤研究所にて健康栄養領域の研究を担当。
2019年に調味料事業部へ異動し、オウンドメディア担当として
「AJINOMOTO PARK」やSNSを通じてどう生活者へ貢献できるか模索している。

食べることが好きだから、味の素に

大学院を卒業して、学んだことをどう役立てて働こうかと考えたときに決め手になったのは、2点ありました。ひとつは「食べることが好き」だったこと、そしてもうひとつは「おいしいをグローバルに提供する」ということ。当時から味の素はグローバルにお客さまと接点を持っていましたし、研究するにしても軸が「おいしいを届ける」ことから離れたくなかった。入社してすぐ、アスパルテームという甘味料の研究開発に携わりました。当時はトクホ制度も始まって、食品の持つ新しい機能への追究が盛り上がりをみせていました。その流れの中で、日本食文化を支えてきたかつおだしの研究に取り組むことになりました。この「かつおだし」とそのなかに多く含まれている「ヒスチジン」というアミノ酸の研究を10年ほどやっていました。

生活者に近い研究の始まり

栄養機能やアミノ酸の機能有用性について長年研究をしてきましたが、キャリアの転機となるのが次なる研究でした。それは、生活者により近い視点で行う「おいしさと栄養」の研究です。もちろん、アミノ酸のすごさは熟知していました。けれど、その先にある暮らしや人にどう関わっていくのか。機能有用性を追求するだけではいけないのではないか。という想いが芽生えました。当時、法人があるアセアンでも、健康課題を食事で解決しようという取り組みがスタートしていましたので、アジアでの食と健康課題に関するリサーチを始めました。一例としてインドネシアの学童に対しての取り組みをお話ししますと、今の日本では考えられませんが、インドネシアには衛生状態が悪く寄生虫に感染しているため栄養が十分に吸収されない子や、動物性タンパク質は高価で十分に食べられない、という貧血の子どもたちがまだまだいるのです。重度の貧血の場合、すぐに体調を壊してしまい学校に通えず授業に参加できない子どもたちもいます。この栄養状態の悪さを何とかしたい、と学校とインドネシア法人と一緒に取り組みました。

栄養だバランスだ、と言っても残されては意味がない

現地の大学のメンバーと、貧血改善の献立をつくりました。鉄を強化しよう、タンパク質も。ビタミンCも必要だ、と30日分の豊富なメニューを考えました。これだけ食べれば改善できるはず。満を持してスタートです。ところがしばらくすると、子どもたちが食べてくれなくなった。原因を探ると、栄養価ばかりに目がいったメニューは、子どもたちにとっては魅力的ではなかったということ。さらには品目が多すぎて、現地のおばちゃんたちがつくるには負担になってしまっていたことが挙げられました。急遽、品目を減らして、子どもたちに人気のメニューを中心に栄養の目標を達成できる献立を組み直しました。10日分ほどの献立でした。すると子どもたちは食事を残すことがなくなった。それから半年ほど食べ続けてもらって、検査。そこには貧血が改善された子どもたちの姿がありました。これは私の中で、大きな学びになりました。いくら栄養だバランスだと言っても、嫌いだからと言って残されたら何にもならない。栄養と美味しさの重なりがどれほど大切かということを痛感した出来事でした。

おいしいと感じられることって、幸せ

食品が身体に与える影響は、「おいしい」「楽しい」「幸せ」という感覚と一緒になってビビッドに効果を発揮するのだと思います。現代の日本社会にとって減塩は大きなテーマですが、「おいしい」「楽しい」「幸せ」という感覚と栄養が重なった時に本当の意味で実現できると思います。調味料事業部へ異動し、これまでの研究視点とは異なる新たな視点で課題に取り組んでいますが、たくさんの経験を経て辿り着いた答えのひとつは「おいしいと感じられることって幸せ」なんだな、ということ。健康のために減塩するにしても、一人ひとり無理のないやり方で、タイミング良く各自の日常に取り入れることが長い目でみれば最も効果的なんです。アミノ酸の一つであるグルタミン酸は、「うま味」の成分でもあります。減塩しても「うま味」をきかせれば、素材の味が引き立ち、塩分を控えてもしっかり「おいしい」、かえって「おいしい」料理になる。この先も、アミノ酸という「うま味」を使って、食と健康の課題を解決していきたいと思っています。

食卓ではみんなが楽しくいてほしい

食卓は楽しく。栄養研究を長年行ってきた私の家の食卓は、これがモットーです。母でもありますから多少の栄養は気にしますが、そこに捉われすぎない。減塩についても、日々の生活において無理なく取り入れながら、みんなが楽しんで食卓を囲めることが大切なのではないかと思います。

「食ができることの可能性」に挑戦

食品会社として挑戦すべき「食ができること」って、きっともっとたくさんあるはずです。食べることって、もっと楽しいよね、色んな楽しみ方があるよね、という世界を私はつくりたい。その可能性を追求し続けていきたいと思っています。やっぱり私、食べることが大好きだから。